棺に来季契約書

人はこの世で会えなくなってから
その素晴らしさを
改めて教えてくれる存在であるといつも思います。


昨年末
プロゴルファーの杉原輝雄さんの告別式が近親者のみの参列により
しめやかに営まれた際のこと


棺には天国でもゴルフができるように
愛用のゴルフ用品と共に

契約メイカー<デサント>との来季契約書が添えられました。
長年、用具契約していたデサントとは永久契約が結ばれており
いつも契約書などは交わされなかったといいます。

しかし
大阪茨木市内で営まれた告別式に間に合うように
前夜、東京から担当者が足を運び
遺族に『来季契約書』が手渡され、奥様はその計らいに感激の涙を流されていたそうです。


大会に出場されている姿に詳しくないのでプレーぶりを知るわけではありませんが
ゴルファー仲間、友人、担当記者・・・
多くの人たちが異口同音に

「口は悪いが心の温かさを持った人」
そう言って故人を偲びました。


ビジネスライクなプロの契約社会においては多額のお金が動くことなど日常茶飯事で
そこには義理人情の入る余地はないのかもしれないけど
トッププロであった杉原さんとメーカーとの固い絆を想います。


ここには書ききれなくて残念ですが
死を悼むどの人のどの言葉にも
杉原さんのこれ見よがしではない人間としての温かみを感じました。



「ゴルフが大好きだったから
セーターやレインウエア、木製のティーなど
天国でもゴルフができるように多くの用具を入れた、」
という長男の敏一プロ

「いっぱい入れ過ぎや!と怒るかもしれないけど、何しても怒りますから・・・」

口では怒ってばかりいたけど
最後まで息子のことを気にかけ「頑張ってるか?」と言ってくれた
本当は息子が可愛くてたまらなかった優しい父へ
息子からの
心のこもった贈り物と言葉を胸に天国に旅立った杉原輝雄さん
私にはとても幸せな旅立ちに思えました。
心からご冥福をお祈りいたします。